◆文芸投稿誌『蔕文庫』とは
「みんなで読もう みんなで書こう へた文庫」。創刊(2000年6月)当初からのこの合い言葉に、「世代越え ふれあいつなごう ひろがろう」が加わった。
『蔕文庫』は、仲間が仲間を誘い、投稿し、自費出版している。発行ごとに2000円の出版会費を納めていただき、その引き替えに雑誌三冊を渡し、うち二冊を新しい読み手・書き手に拡大してもらうという口コミ作戦である。最近は毎号、各自お好みのジャンルに、50近い作品が寄せられている。
「詩歌」をはじめ「掌編小説」「エッセイ」「フォーラム−論点」がある傍ら、「たべあるき」「旅の記憶」「自分史」「小説への招待」「狭山事件記録」など、投稿誌にふさわしく、多様でリベラルなジャンルを備えている。
◆創刊の原点
私は戦後スタートした新制中学から夜間高校に進み、大阪国税局に就職したが、某税務署の労働争議に巻き込まれ、その渦中で懲戒免職になった。時に25歳。その後も労働運動を転々とし、その浮沈の中で得た友や運動仲間。退任した後、60歳も半ばで、集大成として何か形に出来ないか。そんな思いが頭から離れなかった。
もう一つは、明治40年に生まれ、平成に入って83歳で他界した母のことがある。戦中・戦後の時代に5人の子育てを終え、やれやれという歳になっての失明。苦難の生活がその後20余年続く。この母の生き様を書きとどめておきたい、と思った。
60歳の手習いで、地元の「八尾文章クラブ」に入会し、文章の勉強が一から始まった。変わった誌名は、元々は下手の横好きが集る「下手文庫」をイメージしていた。そして、困難な時代にひた向きに生き続けた人たちの足跡と息吹を、いまの高齢化社会のなかで全世代共有のものにしたいと考え、なす、トマトなど果実の「へた」、人にたとえれば、へその緒の「蔕」を使うことにした。(松井 勇/蔕文庫舎)
◆蔕文庫舎/八尾市八尾木5-20 TEL&FAX:072-994-7805
E-mail:m1010@poem.ocn.ne.jp http://heta-bun.hp.infoseek.co.jp/
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